放課後等デイサービスとはどんな事業か、をお話いただく前に、そもそも上さんが福祉事業に取り組まれたきっかけをお聞かせください。
一番のきっかけは東日本大震災で、話は少し遡ります。
私はもともとアルファグループ株式会社というウェブマーケティングやセールスプロモーションを手がける会社の代表でした。大学の在学中に立ち上げた会社が、10年でJASDAQ市場に運良く上場。経営者としては一定の成功を収めたと言えるかもしれません。会社の成長に合わせて事業の多角化も図り、当時は「お金を稼ぐことが人生の成功であり、幸せなこと」だと思って突っ走ってきたところがありました。ですが、一方でどこか「私は人を本当に幸せにしているのだろうか」という自問が消えなかったのも事実でした。人生のターニングポイントは、東日本大震災後に参加したボランティア活動でした。ボランティア活動を通じて、「自分が行動したことで周りが笑顔になり、感謝の言葉をいただき、それによって自分が勇気づけられる」という体験をしたことで、仕事とは本来こうあるべきだと、頭をがつんと殴られたような衝撃を覚えました。
そして、その体験により、「事業を通じて、人の役に立っていることがストレートに体感でき、結果として自分も幸せになれる仕事とは何か」と考えた結果、福祉事業に出会いました。
ドラスティックなキャリアチェンジですよね。ただ、福祉といっても、教育から介護まで幅広くある中、「放課後等デイサービス」に注目されたのはなぜですか。
チェーン展開でより良い状態を作り出せると確信した点と、民間企業が参入可能となり、市場として伸びていた点です。現在、この分野はチェーン展開している事業所がありませんが、チェーン展開に適した事業であると思っています。放課後等デイサービスは、学校に通っている発達障害児に対し、放課後や夏休み中に、生活能力を身に着けるべく訓練を提供する事業のことで、運営費は障害児童所給付費によってまかなわれています。最大の特徴が「訓練機会を提供する」ところなのですが、発達障害児と一言でいっても、個性はさまざまなので、一律のプログラムではなかなかフォローできないのが実態です。子どもたちに日々接しながら、子どもたちの成長に合わせた教育プログラムを構築するには、いち事業所として運営していると、時間的な制約が多く非常に負担となります。そうすると、訓練が思うように進みません。そのため、チェーン展開することで役割分担を行い、本部と療育(治療と教育)を行っている最前線である現場がそれぞれやるべき事に特化出来ると考えました。
実際に、弊社でもこの分野を色々と調査しましたが、訓練を提供する場というよりも、子どもたちをただ単に預かる場となっている施設が多くあるとの印象です。2012年4月の障害者自立支援法の改正で、民間委託がより広がっています。しかし、放課後等デイサービスを通じて、子どもたちが日常生活を送る上で必要なことを少しずつでも学ぶ機会を提供できなければ、子どもたちの自立支援にはつながらないと感じていました。
そうなんです。放課後等デイサービスが行うべきは、子どもたちが将来自立できるように、その先の理想は自分で仕事を持てるようにサポートすることだと考えています。ただ、そうはみな分かっていても実際には多くの現場が毎日の業務に追われて、中長期的な視点に立てないことも十分に理解できます。そこで、ハッピーテラスでは、「フランチャイズシステム」を活用することで、プログラム開発や共通システムの運用、導入など本部でできることと、子どもたち一人ひとりへの対応という各事業所でできることを分業化できればと考えました。本部は中長期的な視点で各事業所をサポートし、現場では目の前の子どもたちの成長に集中できれば、効率化も図れ、子どもたちに対して質の高い訓練機会を提供出来ると考えました。
市場としてはいかがでしょうか。現在、文科省の発表によると障がいを抱える児童生徒数は約28.5万人いると言われています。これは小中学校の児童生徒1,055万人の2.7%に当たります。(※1)その一方で、通常学級に在籍する児童生徒の6.5%程度が「行動面もしくは学習面で著しく問題あり」と文科省は指摘しており、まだ発達障害の可能性のある子どもたちは潜在的に存在すると考えています。
はい。まだ発達障がいを抱えている可能性のある子たちは多くいると感じています。障がい者をサポート、自立を支援する法整備が進んだ事や、発達障がいに対する一般的な認識と理解が広まってきたこともあり、サービスを利用される方が増えてきていると感じています。
私たちも調査して分かったことは、放課後等デイサービスの対象年齢である7歳から18歳の人口は約1381万4千人、そのうち8.58%の約120万人弱が利用対象者である可能性だと考えられています。(※2)この数字は介護の特養待機者52万人、保育園の潜在待機児童数の80万人よりも多い数字です。
(※1)文科省「学校基本調査」「特別支援教育資料(H23年)「H23年度通級による指導実施状況調査結果について」から算出
(※2)放課後等デイサービスの対象年齢(7~18歳)人口1381.4万人(総務省統計局 平成25年10月1日現在)の内、義務教育段階における特別支援を要する児童生徒の割合2.7%。義務教育段階における通常学級に在籍する児童生徒のうち、発達障害の可能性の指摘を受けている割合5.88%。放課後等デイサービス対象年齢人口にも上記割合が存在すると仮定し1381.4万人×8.58%=約118.5万人と試算
そもそも「発達障害者」とは、どのような方で、どんな特徴があるのでしょうか。
発達障害には、本当にさまざまなケースがあり一概に言うのは難しいのですが、共通しているのは「コミュニケーション力の欠如」です。例えば、自閉症やアスペルガー症候群の方は、相手の気持ちを読み取るのが難しく、「空気が読めない人」と思われがち。注意欠陥多動性障害(ADHD)の方は、大切な予定をすぐ忘れてしまったり、学習障害(LD)の方はある特定の分野だけ理解ができなかったりと、「集中力がない」「人の話を聞いていない」と、周りを怒らせてしまうことなども多々見られます。
そうした子どもたちもまた将来、社会に出なければなりませんね。社会へ進出する為には、子どもたちにとっては何が必要でしょうか?
まず日本社会全体が、発達障害についての理解を深めることが重要だと考えます。その上で、障害を持つ子供たちが将来仕事に就くうえでは、周りと協調しながら生きていくことが必要であり、そのためには、「コミュニケーション力を高める」ことが非常に大切だと考えています。
実際に採用する側になって考えると、何よりもまずコミュニケーション力というのは分かります。
そうですよね。この事業を始めるにあたり、さまざまな経営者に、「障害者採用を行う際、その方にどんな要素を求めるか?」をヒアリングしたのですが、皆さん、コミュニケーション力と体力だと言うのです。つまり、社内外の人と協調し仕事を進める力と、毎日、決まった就労時間を元気に過ごせる力ということです。発達障害の方にとっては、これが本当に苦しく、難しいことですが、繰り返し学ぶことで、誰もがだんだんとできるようになっていきます。
ハッピーテラスでは、「ソーシャルスキルトレーニング」として、留守電の受け答えや、ピザの注文、伝言を受けて伝える、といった日常の出来事をロールプレイングで学んだり、「ゲーム」を通じて表情から人の気持ちを察したりと、さまざまなシチュエーションを想定したプログラムを組んでいます。また、「体育」のプログラムでは“ハッピーテラス体操”を必ず行うなど、生活の基盤となる体力強化にも取り組んでいます。
今後、ハッピーテラスをフランチャイズ展開していく中で、どんなパートナーさんと一緒に組んでいきたいと考えていますか。
ハッピーテラスとしては、どんな方でもうまく進められるようなプログラム開発や、研修によるフォロー体制を強化していきます。それがフランチャイズ展開を進める前提だと思っています。ただ、ひとつだけ伝えたいのは、「うまくいかなければ手を引けばいい」という気持ちではできない事業だということ。この事業と一生付き合っていこう、という覚悟をもった方と、ぜひお会いしたいと思っています。
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- ATカンパニー株式会社
- フランチャイズという経営手法を駆使した経営支援を行う。企業・起業家に対し、無報酬でフランチャイズ情報の提供を行う独自のビジネスモデルを構築。
数多くの企業、起業家を成功に導いている。
- 設立:2009年3月19日
- 所在地:東京都千代田区外神田1-18-19 新秋葉原ビル 3階
- 電話番号:03-3526-2980
- 資本金:1,000万円(グループ全体4,200万円)