ATカンパニー株式会社
前代表取締役
浅野 忍土
フランチャイズ・ストラテジスト、浅野忍土が監修。
銀行、ITベンチャーを経て、FCコンサルティング会社であったベンチャー・リンクへ入社し、フランチャイズビジネスに携わる。
8年間、チェーン展開支援を主とした業務に従事し、牛角、しゃぶしゃぶ温野菜、土間土間、銀のさら、タリーズ、カーブスなどを多店舗展開。
結果1,500店舗以上のチェーン展開に関与。
その後、独立し、ATカンパニー(株)を創業し、FC展開を支援。
さらには女性専用AIパーソナルトレーニング「ファディー」FC本部を設立し、自らFC本部も経営している。
目次
「ヒト」「モノ」「カネ」そして「情報」の4つを経営資源といい、このうち「企業の血液」とも呼ばれるのが、お金です。企業という身体を維持するためには、血液のように循環する資金が常に必要となります。必要なときに必要なところへ資金を投入できなければ、企業の活動は停止します。資金の調達は、企業にとっての生命線です。
企業が、外部から資金を調達する代表的な方法には、3つあります。
・金融機関からの借り入れや社債の発行(負債の増加)
・株式の発行(資本金の増加)
・補助金・助成金による資金調達
自社の事業活動に最適な資金調達の方法を決定できることは、事業の経営者として必要な資質の1つといえます。基本的な資金調達の仕組みを理解しておきましょう。これは、フランチャイズビジネスも含め、一般的な企業経営すべてに通じる基本です。
■金融機関からの借り入れや社債の発行(負債の増加)による資金調達
金融機関からの借り入れや社債の発行などによって、外部から資金調達を行うことができます。この方法の場合、負債が増加します。
特徴は「返済期日までに資金返済をしなければならない」こと。重要なポイントとして「企業の信用力」が強く問われます。
借り入れの場合、多くのケースでは担保の設定を求められます。担保をとることで貸す側のリスクを減らせるからです。結果として、土地・建物など価値の高い資産を保有する企業や、継続して安定した売上実績のある事業向きであるともいえます。
まだ実績のない創業時における借り入れの手段としては、政府系金融機関からの融資や信用保証協会の保証付融資が多く利用されています。
社債を発行する場合には、普通社債や新株予約権付社債(ワラント債)、転換社債型新株予約権付社債(転換社債)などがあります。社債は金利を固定するため、長期資金の調達に適しています。
普通社債は償還予定時期における支払能力が問われるため、企業の信用力が非常に重視されます。新株予約権付社債は、償還予定時期に社債のまま回収するか株式に転換するかを決められる点で投資家にメリットがあります。企業の信用力が低い段階で活用されることが多い方法です。
■株式の発行(資本金の増加)による資金調達
株式を発行する場合には、公募増資・株主割当増資・第三者割当増資などがあります。金融機関からの借り入れや社債と違い、返済義務や支払利息などの負荷を伴わずに多額の資金調達が可能であり、自己資本に厚みをもたせることができます。
また、資金の使途などが限定されず、担保や保証人の必要もありません。
ただし、株式発行には、事業主が経営をコントロールできなくなるというリスクがあります。通常、株主には持ち株数に応じた株主総会での議決権が認められます。議決への賛否という形での経営参加権です。他者に多くの株式が渡れば、買収・合併や、役員の変更など、経営上の大きな判断が他の株主の意向に沿うものとなります。
そのため、株式発行に際しては、タイミングや規模などを入念に検討し、計画的に行う必要があるのです。
■ 助成金・補助金による資金調達
国や都道府県などによる助成金や補助金を活用して、資金を調達する方法もあります。助成金・補助金は目的や条件が定められ、審査も必要としますが、原則的に返済が不要であるため、情報を入手してうまく活用できれば大きなメリットとなります。
中小企業向けの助成金・補助金制度には、中小企業振興を目的としたもの、技術開発を目的としたもの、雇用の安定を目的としたものなどがあります。
各種助成金や補助金の制度は多様であり、その多くは申込期間が限られています。各機関のホームページなどをこまめにチェックするとよいでしょう。
このほか、外部からの調達ではありませんが、内部留保の利用(資産の現金化)という方法もあります。これは、社内に留保されている税引前利益の一部や、支出を伴わない費用である減価償却費・各種引当金などの蓄積を原資とするものです。
また、資産の現金化としては、不動産など回収時期がかなり先の債権、あるいは事業そのものの売却も考えられますが、現金化する場合、実際の価値よりも低い金額に減殺される可能性があります。
資金調達方法の中からどれを選択するべきなのかは、現在の事業の状況や将来の資金需要の見通しなど、中長期的な計画が必要となります。自社にとってどれがベストなのか、望ましい会社の将来を思い描き、そこから逆算するバックキャスティング・アプローチの視点をもち、最適の方法を選択しましょう。