近年、社会情勢の変化速度はさらに上がり、それに合わせて顧客ニーズの多様化も加速しています。この状況下で企業成長を成し遂げるため、多くの企業が「多角経営」に乗り出しています。
多角経営には、企業の利益を向上させるだけでなく、経営の安定化に繋がるなど、多くのメリットがあります。ですが一方で、相応のリスクを覚悟しなければならない手法です。
この記事では、多角経営の形を確認したうえで、メリット・デメリット双方を解説します。また、事業多角化を成功させた企業の例を見ていくことで、多角経営のイメージをつかんでいきます。
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現在は、女性専用AIパーソナルトレーニング「ファディー」の支援に注力し、全国に出店拡大中。
目次
近年、多くの企業が事業の多角化に乗り出すことで成長を遂げています。ここでは「多角経営」がどのような活動なのか、そして、多角経営が広がる背景について解説します。
多角経営とは、事業拡大の方式のひとつで、これまでの主力事業とは別で、新たなビジネスに着手することを指します。低迷する現状からの脱却を目指して、あるいは、さらなる企業成長へ向けて、多くの業界で事業の多角化が広がっています。
多角経営には、現在の企業活動と同じ分野で事業を拡大するものから、ノウハウを活かした他分野の商品開発、さらにはまったく違う分野へ飛び込むものまで、さまざまな形があり、これまでも数多くの企業が成果をあげました。
事業を多角化するメリットとしては、単純に利潤を上げるだけでなく、経営リスクの分散や社内の活性化などが挙げられます。
なぜ、ここ数年で多角経営に取り組む企業が増加しているのでしょうか。理由としてはまず、社会情勢の急激な変化が挙げられます。ひとつの事業のみに集中することは、現代ではリスクであると考える企業が、次々と多角経営へ乗り出しました。
また、顧客ニーズの多様化も大きな理由です。単独の事業では十分にニーズを満たすことができないため、さまざまなニーズに応えられる多角経営が重要性を増しています。
多角経営にはさまざまな実現方法があり、それらは一般的に「4つの型」に分類されます。多角経営の「型」を知ることは、先の見えにくい事業の拡張で迷子にならず、事業展開を磐石なものにするための大切なポイントとなります。
「垂直型の多角化」とは、現在の主力事業における上流工程あるいは下流工程に事業を拡大することを指します。これまで培ったノウハウを活かせるだけでなく、業界内の繋がりを元に事業拡大を進めやすいといったメリットがあります。
垂直型に分類される多角化としては、レストラン経営をおこなう企業が原材料の製造に着手する(後方的多角化)、印刷会社が書籍を出版・販売する(前方的多角化)などが挙げられます。
次に「水平型の多角化」は、主力事業が含まれる分野の中の別事業に進出する方式を意味します。垂直型よりも直接的にノウハウを活用することができ、また、同分野のためマーケティングにかかるコストも少なく済むといったことが特徴です。
この型に当てはまるものとして、飲食店のデリバリー事業や、自動車メーカーによるオートバイの製造などの例があります。
「集中型の多角化」においては、企業がそれまでに培ったノウハウを活かして、他分野での新製品の開発に注力します。水平型と違うのは、主力分野の外へ活動の場を広げるという点で、時代の変化に適応するために「集中型」へ乗り出す企業が多いです。
集中型の例としては、デジタルカメラの製造業者が他分野の精密機器を製造することが挙げられます。
最後に、これまで挙げた他の型とは違って、主力事業とまったく関係のない分野へ進出することを「コングロマリット型」と呼びます。コングロマリットは簡単に言えば「グループ企業」のことですが、本来であれば複数の企業が各々おこなう事業を、ひとつの企業で担ってしまおうということでこのような名称がつきました。
コングロマリット型の例には、コンビニATMや、広告業者による保険サービスなどがあります。
多角経営には、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。事業多角化にはさまざまな実現方法があるため、得られるメリットも多種多様です。そのため、ここでは多角経営による代表的なメリットを4つ紹介します。
多角経営によるメリットとしてまず挙げられるのが、企業活動におけるリスクの分散です。企業活動の柱がひとつしかないと、状況の変化などでその柱が揺らいだとき、対処することができません。現代はとくに社会の変化が激しいため、このようなリスクはかつてよりも大きくなっています。
そこで、複数のビジネスを展開することで、そのリスクを軽減して、経営基盤を安定させます。複数の柱を持つことで、ひとつの事業が衰退期に入っても、別の事業が成長しているのであれば、そちらに乗り換えるという選択が可能です。
これまでの企業活動で蓄えたノウハウを用いて多角経営をする場合、経営資源を有効に活用することができます。多角経営で活用できるノウハウは、製造や開発に関するものだけではありません。むしろ、経理やマネジメントといった分野の経営資源が力を発揮するケースが多いです。
たとえば、時間や季節に縛られるような業種であれば、現状の活動期間外でできるビジネスの考案により、企業形態を大きく変えることなく利益の向上が見込めます。これまでとは違った角度から経営資源を活用できることが、多角経営のメリットのひとつです。
事業の多角化によって、シナジー効果による利益向上が見込めます。
ここでいう「シナジー効果」とは、複数の分野が接続することによって、単独で行動していたときよりも大きな成果を生むことです。経営資源の有効活用による利益向上だけでなく、ひとつのグループが複数の事業を担うことによる業務効率の向上、他業種とのコラボレーションによる新たなノウハウの獲得などが含まれます。
シナジー効果は連鎖的に作用するため、長期的な企業の成長といった大きな成果に繋がるのです。
多角化をおこなうことで、社内のモチベーションが向上するのもメリットの1つです。まず、ひとつの事業で必要となるポストの数は限られます。その事業を長いこと続けている場合、ポストは既に埋まっていて、社内のキャリアプランも限られています。
そこで、複数の事業を手がけることで必然的にポストが増え、キャリアの可能性が広がって社員のモチベーションが高まるのです。社内の活性化が起こり、社員ひとりひとりの成績が上がれば、企業の利益向上に結びつきます。
多角経営は新事業への参入であるため、やはりメリットだけではなく、デメリットも存在します。事業多角化に乗り出すためには、リスクをよく把握しておくことが大切です。
まず単純に、多角経営にはコストがかかるものです。必要となるコストは、蓄えたノウハウをどの程度活用するのかに関係します。ノウハウを直接的に活かすことができるビジネスよりも、まったく別の分野へ進出するほうが、当然、高いコストが発生します。
そうでなくとも、新規事業の立ち上げには、製品開発や広報、社内システムの整備など、さまざまなコストが必要です。これらのコストが、多角化によって得られるであろうメリットを超えていないかどうかは、逐一、検討することが大切です。
これまでとは別分野での事業をはじめると、企業イメージが曖昧になってしまうことが往々にしてあります。企業イメージには「○○の分野ならばあの企業」といったように、同分野の別企業と差別化をはかる効果がありますが、多角経営を推し進めることでこの強みを手放すことに繋がりかねません。
「結局、何をしている企業なの?」と多くの人が感じてしまうと、重要な機会損失を被ってしまいます。現在すでに強いイメージを持っている企業が新事業に取り組むときには、顧客への配慮が不可欠となります。
当然のことですが、多角経営には相応のリスクがあります。新規事業に乗り出すのには大きなコストがかかる上、事業が必ず成功する保証はありません。また、既存の事業と新規事業のバランスが取れずに、共倒れになるリスクもあります。
基本的に多角経営は、現在の主力事業が安定しており、新規事業へ進出する体力・資本力を持つ企業ほど有利です。そうではない場合、事業多角化を進めるためには相応の覚悟が求められます。
最後に、多角経営で成功している企業の例をいくつか紹介します。成功事例を知ることで、多角経営のタイプやメリットのイメージをつかみやすくなります。
セブンイレブンは、いくつもの型の多角経営を成功させた企業です。一例を挙げると、スーパーマーケットに対抗するためにプライベートブランドの商品を開発したり(垂直型)、コンビニの利便性を活かすためにATMを設置したり(コングロマリット型)、いずれも顧客ニーズを的確に捉えて事業の多角化を成功させました。
現在のソニーは、コングロマリット型の多角経営をおこなう代表的な企業です。家電製品の開発から、生命保険、ゲームや映画の製作、さらには芸能事務所まで、あらゆる分野へ進出し、利益を生み出しています。
これらは事業多角化によるシナジー効果を狙った施策で、企業の吸収合併などを繰り返しながら、大きな成功を収めました。
富士フィルムは、集中型の多角経営の代表例として知られています。フィルムカメラの需要減少に早くから気づき、フィルム製造で培った技術を活かせる化粧品・医薬品の製造に乗り出しました。
結果的にフィルムカメラの需要激減による打撃を回避でき、さらなる成長に結びついています。
いままでの主力事業とは別に、新たな事業を展開する「多角経営」。多角経営には、同分野の別事業へ拡大するものから、企業ノウハウを直接活かして別事業にシフトするもの、さらには、まったくの新分野へ飛び込むものまで、さまざまな実現方法があります。
多角経営のメリットは、経営リスクの分散や資源の活用、シナジー効果とモチベーションアップによる利益向上があります。反対に、コストがかかる、企業イメージが分散する、共倒れになりかねないなど、相応のリスクも存在します。
多角経営に乗り出す際は、基本となる型と成功事例を参考に、メリット・デメリットを把握した上で十分に検討することが大切です。