ATカンパニー株式会社
前代表取締役
浅野 忍土
フランチャイズ・ストラテジスト、浅野忍土が監修。
銀行、ITベンチャーを経て、FCコンサルティング会社であったベンチャー・リンクへ入社し、フランチャイズビジネスに携わる。
8年間、チェーン展開支援を主とした業務に従事し、牛角、しゃぶしゃぶ温野菜、土間土間、銀のさら、タリーズ、カーブスなどを多店舗展開。
結果1,500店舗以上のチェーン展開に関与。
その後、独立し、ATカンパニー(株)を創業し、FC展開を支援。
さらには女性専用AIパーソナルトレーニング「ファディー」FC本部を設立し、自らFC本部も経営している。
目次
はじめに、フランチャイズでの開業と完全独立開業との違いを説明します。どちらも自分の店を持つといった点では同じですが、明確な違いも多くあるため、違いをより詳しく知りたい方は参考にしてください。
フランチャイズでの開業とは、加盟店を募集している本部と提携して経営ノウハウや店舗名、メニューなどを提供してもらう経営方式です。すでに高い知名度がある店舗なため、開店直後から一定の集客を見込め、宣伝も最低限で済みます。
本部から長年培った営業ノウハウも提供してもらえるため、業種未経験でも成功しやすい特徴が魅力的です。とはいえ、本部のルールに従わなければならず自由にできる範囲が限られていたり、ロイヤリティの支払い義務があったりすることを押さえておきましょう。
自分で計画を立て、店舗探しから経営スタイル、メニューまで決めて開業する経営方式です。自分の好みに合わせた経営が可能で、軌道に乗れば自分で店を拡張したり増やしたりできるでしょう。
その一方で、業種に関する知識や経営ノウハウを知っていないと順調な経営は難易度が高いといえます。宣伝から人材確保、営業まで自分で行なったり商売を軌道に乗せるまでに時間がかかったりする特徴があります。ほとんどの場合、開業前に同業他社で修行を積んだり、経営スクールに通ったりしたうえで開業している傾向です。
独立開業とフランチャイズでの開業を比べると、フランチャイズ開業は成功しやすいイメージを持っている方が多い傾向です。しかし、フランチャイズ開業は失敗しやすいといわれており、開業後5年後にフランチャイズで成功しているケースは70%といったデータが出ています。完全に独立開業した自営業の場合で5年後も成功しているケースが25%なので、フランチャイズでの独立開業が失敗しやすいといいきれません。とはいえ30%失敗している理由は何かみていきましょう。
経営に求められるノウハウやスキルなどを本部のサポートに頼りすぎてしまうことが原因です。フランチャイズ開業は、店舗を経営するためのマニュアルやノウハウ、職種によっては、什器や内装なども本部に提供してもらえます。
しかし、店や従業員をマネジメントして売り上げの維持には、オーナーの経営力が必要です。自由に経営できないとしても、本部からの指示を待つだけでは従業員とかわりません。オーナーとしての自覚が持てないままで営業を続けていけば、いずれ失敗する可能性が高いといえます。
フランチャイズは本部にいろいろな面で頼れますが、頼りっぱなしで良い、というわけではないため、経営者としての自覚を持つことが重要です。
フランチャイズに加盟して開業する際に、資金ぐりの見通しが甘いことが原因です。店舗運営は自己資金もしくは、融資などを含めた一定の資金力が求められます。
フランチャイズとはいえ、開店当初から運営がうまくいくとは限りません。軌道に乗るまで赤字が続き、自己資金で補填するケースも珍しくないでしょう。フランチャイズだからすぐに黒字になると楽観的に考えず、ある程度運営資金を貯めたうえで開業しましょう。
経営の経験や運営能力が不足していることが原因です。フランチャイズに加入すると未経験の職種でも店舗を経営できますが、まったく知識ゼロで黒字を出し続けるのは難易度が高いといえます。
店を出して経営していれば一定の集客が成功し、売り上げがあがるとは限りません。近所に競合店ができたり、ブームが去ったりしてしまうなどの理由で客足が落ちる可能性はいくらでもあります。
経験や能力を活かして経営を立て直す努力が求められ、フランチャイズ本部に頼りきりでは、自分でピンチを切り開けません。本部側も、赤字が続いてしまっても、オーナーが改善する努力を見せない店舗に手を差し伸べてはくれないでしょう。
フランチャイズ加盟後に本部と良好な関係を維持できないことが原因です。フランチャイズに加盟する以上、本部の方針に従う必要があるため、納得いかない指示が行なわれることもあるでしょう。
また、フランチャイズ加盟を解約する場合、一定期間同業の仕事をしないなどのルールが契約に盛り込まれているケースがあります。契約書をよく読んでいないと、後でトラブルになるリスクが伴うため、本部と契約を結ぶときだけでなく、解約する際は改めて契約書を確認してください。
フランチャイズ開業した後、末永く安定して運営するには、多大な時間と労力、お金が必要です。ここでは、フランチャイズに加入して開業し、うまく運営を続けていくための対策を紹介します。
フランチャイズはいろいろな種類があるため、加入先の下調べは入念に行なうことが大切です。短期間で大きく売り上げを伸ばすところもあれば、その逆も珍しくありません。
例えば、2011年に開店した東京チカラメシは、2012年には全国に100店舗を展開する一大チェーン店になりました。しかし、2013年になると人手不足を原因に店舗の閉店が相次ぎ、現在は8店舗を残すのみです。
また、タピオカや白い鯛焼きなど爆発的なブームが起こったものの、すぐにブームが去って閉店が相次ぐケースもあります。急成長を遂げるフランチャイズは、魅力的に見えますが、急激に失速する可能性も高い傾向です。
日本には、目立ちませんが長年良好な経営を続けている需要が高いフランチャイズも多く存在しています。目先の華やかさに惑わされず、加入するチェーン店を選びましょう。
フランチャイズ加盟したからといって、本部が上司になったわけではなく、対等なビジネスパートナーとなるため、経営者としての自覚を持つ必要があります。
オープンしたら、本部はアドバイスなどは行なってくれますが、それをどう活かせるかはオーナー次第です。店舗で雇うスタッフのマネジメントも自分で行なう必要があるため、経営者としての自覚を持った経営力が求められます。
フランチャイズに加盟は、金融機関からの融資が受けやすいですが、自己資金を多めに蓄えておくことが重要です。本部によっては融資を受けるサポートをしてくれるところもあります。しかし、融資は借金なので、毎月返済が必要ですし、利息もかかります。
融資を多めに受けるとそれだけ返済も大変になり、店舗運営にも影響が出てしまうでしょう。フランチャイズに加盟して開業する場合も、自己資金はある程度貯めておくことをおすすめします。
フランチャイズに加盟したからといって楽観視せず、まずは自分とアルバイトのスタッフ1〜2人程度で回せる小規模な店舗からはじめるのがポイントです。小規模な店舗なら人件費だけでなく、家賃や光熱費も抑えられます。
一方で店舗が大きくなるほど多くの集客が見込めますが、その分スムーズに運営していくには人手や労力がかかります。スタッフのマネジメントも必要で、人手が集まらなければたちまち閉店の危機に陥る恐れもあるので、小規模な店舗からはじめましょう。
フランチャイズ開業は失敗例を多数知っておくことがポイントです。インターネットで検索すれば、失敗した事例や体験談を多く見つけられます。
事前に対策できるポイントが得られるため、失敗例にも目を通しておくことが大切です。自分自身と照らし合わせてみれば、計画の修正などにも役立つでしょう。
今回は、フランチャイズに加入して開業したのに失敗しやすい原因や対策を紹介しました。フランチャイズに加盟して開業した場合、約7割の方が5年後も順調に経営を続けています。
経営の失敗を防ぐためにも、下調べと計画を入念に行ない、オープン当初から順調な運営ができる準備をしておくことをおすすめします。