日本では1990年代に始まり、過去20年で大きく成長したフィットネス業界。そんなフィットネス業界の現状はどうなっているのでしょうか。この記事では、フィットネス業界の現状とトレンド、業界が抱える課題、そしてフィットネスジムの今後の動向まで解説します。
「フィットネス業界は今も成長しているの?」「いまのトレンドは?」「今後の業界はどうなる?」といった疑問を持っている人は、ぜひ参考にしてみてください。
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わずか4年で110加盟を突破した
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ATカンパニー株式会社
ATカンパニー(株)は、FC営業代行支援会社として2009年に創業。
乳幼児教室「ベビーパーク」をFC店ゼロから、約2年半で220加盟開発。
放課後等デイサービス「ハッピーテラス」をFC1号店から、約2年で101加盟開発
現在は、女性専用AIパーソナルトレーニング「ファディー」の支援に注力し、全国に出店拡大中。
目次
まずはフィットネス業界の現状を、いくつかのトピックから見ていきます。
現在のフィットネス業界の市場規模は回復傾向にあります。「レジャー白書2022」によると、フィットネス業界は2011年から右肩上がりの成長を遂げ、2019年には市場規模5,000億円に迫りました。また経済産業省の調査では、調査開始の2000年からフィットネスジムの会員数は増加を続け、2019年には約249万人を記録しています。
2020年は市場規模縮小を余儀なくされましたが、2021年には市場規模前年比約129%となり、市場は回復へ。なお会員数については、2022年時点で180万人と、前年比約5%上昇と、わずかな変化ながら、回復の兆しが見られています。
多くの業界で嘆かれる人手不足の問題は、フィットネス業界でも深刻です。
経済産業省の調査によると、フィットネスジムの会員数は2000年から2018年にかけて、2倍以上に増加しました。とくに2015年は、前年比で5%近く増加と、大きく成長しています。一方で、2011年から2019年にかけてのフィットネスジムのトレーナーの上昇率は、わずか1.2%と伸び悩んでいるのが現状です。
少子高齢化だけではなく、企業に人材教育のノウハウが不足しており、専門の教育機関も少ないことが、フィットネス業界における人手不足の原因とされています。
近年のフィットネス業界の傾向として、M&Aによる外部企業の参加があります。とくに2021年には、前年の市場規模縮小が影響し、フィットネス業界で多くのM&Aが見られています。
24時間営業のフィットネスジムを全国に展開する「フィットイージー」は、大手コンビニチェーンのファミリーマートが運営していた「Fit&Go」を譲り受けることで、事業拡大を進めました。また、全国にスポーツクラブを展開する「ルネサンス」は、アウトドアフィットネス事業を手がける「Beach Town」の株式51.7%を取得しました。
異業種からの参加としては、2018年、砂糖の精製販売を行う「日新製糖」が、フィットネス事業を手がける「エヌエーシステム」を完全子会社化したことが話題となっています。多くの顧客ニーズを抱えるフィットネス業界は、今後もM&Aによる事業拡大が続くでしょう。
変化の激しいフィットネス業界における、現在のトレンドを紹介します。
コンビニ感覚で気軽に通えるジムとして注目を集めているのがコンビニジムです。コンビニジムは「コンビニフィットネス」とも呼ばれるほどフィットネス業界で広がりを見せています。駅周辺などアクセスの良いエリアに店舗を構え、利用料金が一般的なジムと比べて安い特徴があります。近年のコンビニジムには、オンラインシステムを活用した無人ジムも多いです。
コンビニジムは総合ジムなどと比べて初期投資・ランニングコストともに低いため、経営を始めやすいスタイルです。
近年はコンビニジムのように、「無人」「安価」といった特色を打ち出すフィットネスジムが成長しています。とくに、現在のフィットネス業界のトレンドといえるのが「女性専用」を掲げたフィットネスジムです。
現在、フィットネスに通う女性の6割がスポーツジムに入会していますが、その中で、女性専用のフィットネスジムとして、ホットヨガなどの新たな業態が台頭しました。女性専用ジムには、あらかじめ顧客層を絞ることで導入する設備を厳選できる、「女性専用」は利用者の安心感に繋がるため集客がしやすいなどのメリットがあります。
オンラインフィットネスジムは、ライト層の取り込みや人件費の抑制を目的として、2020年頃から急速に発展しました。自宅で気軽に始められるため、利用料金の安さもあり、すでに多くの顧客を獲得しています。
そのほかにも、全国の実店舗で有名トレーナーによるリアルタイムのオンラインレッスンを行うことで、会員を繋ぎ止める効果もあります。オンライン専門のフィットネス企業も登場しており、今後さらに成長する形態です。
近年のフィットネス業界は、次のような問題を抱えています。
今後の業界成長のためには、課題の改善が必要です。ここでは、これらの課題の内容を詳しく見ていきます。
現在のフィットネス業界は、慢性的な人手不足問題を抱えています。過去10年、業界は市場規模・会員数共に急成長を遂げましたが、トレーナー人員については、わずかな増加にとどまっています。
人手不足は多くの業界が抱える問題ですが、フィットネス業界には固有の要因があります。多くの企業において、フィットネスジム運営に必要な人材教育ノウハウが欠けていることが指摘され、「何を・誰が教えるのか」という仕組みが十分に構築されていません。
次に、フィットネストレーナーを育成する機関が少ないことが挙げられます。フィットネスジム運営に必要な知識・技術を深く学ぶ機会がないことが、トレーナー不足に繋がっています。
会費を支払ってはいるものの、利用頻度が低い会員を「幽霊会員」と呼びます。一般的にフィットネス業界には、1か月間に一度もジムを利用しない幽霊会員は2割程いるとされます。
これまでのフィットネスジムの経営は、幽霊会員が支払う会費にある程度依存していました。しかしここ数年で幽霊会員が減少したため、これまでの月額費依存の体制が業界内で問題視されています。会費依存からの脱却は、フィットネス業界が直面する大きな課題です。
今後はコストを削減しつつ、事業委託やオンライントレーニングなど、会費以外の売上を得る取り組みをしましょう。
業界内における競争の激化も、フィットネス業界が抱える問題です。過去20年でフィットネスジムの利用者が2倍まで増加したように、フィットネス業界は急激な成長を遂げました。それに伴い業界内で激しい競争が起こり、中小規模のグループが参入したことにより競争はさらに加速しています。
しかし近年は「我慢比べ」に突入していると指摘されており、体力のない企業の撤退・外部企業による買収、また都市部では競争による消耗で集客力の低下が見られています。我慢比べはさらに長く続くと予想されているため、この状況からどのように脱却するかが、フィットネス業界の課題です。
最後に、今後のフィットネス業界において重要なポイントを解説します。
すでに多くの顧客を持つフィットネス業界ですが、フィットネスの本場アメリカと比較すると、日本におけるフィットネス利用者の割合はまだまだ低いのが現状です。人口当たりのフィットネスジム利用者を見ると、アメリカは約18%であるのに対して、日本はわずか3%にとどまっています。
そのため新たな顧客層の取り込むことで、さらなる成長が期待されます。既にコンビニジムやオンラインフィットネスジムが、これまでフィットネスと接点を持たなかった顧客の獲得に成功しています。今後は潜在的な需要を分析し、新たな事業への展開が重要です。
以前はフィットネスといえばダイエット・競技用トレーニング目的の顧客が大半でした。しかし近年は健康ブームと社会情勢の変化によってニーズが多様化したため、ダイエット以外の価値提供が求められます。
新たな動きとしては、高齢者が健康寿命を延ばす目的でフィットネスに関心を持つ、社員健康増進の取り組みとして企業がフィットネスジムと提携する、などが挙げられます。こうしたニーズに応えるためにも、ダイエット以外の価値を提供するフィットネスジムの成長が予測されます。
近年はデジタル技術の発達によって、新たなジム形態が成長しています。コンビニジムでは、予約・支払いをオンラインで完結させ、入退室もネットワークシステムで管理する完全無人のジムが登場しました。また、自宅で簡単にトレーニングができるオンラインフィットネスジムは、2020年頃から急速に成長を遂げました。
IT技術は現在も発展を続けているため、今後はデジタル技術を活用した経営がさらに重要です。
2011年から右肩上がりの成長を遂げたフィットネス業界は、2020年は規模縮小を余儀なくされたものの、翌年には前年比約29%の市場規模拡大があり、復調に向かっています。2021年にはM&Aによる外部企業の参加が目立ち、今後も発展を続けていくでしょう。
フィットネス業界の現在のトレンドとしては、「通いやすい」「女性専用」などの特徴を掲げたものや、オンライントレーニングサービスが注目されています。一方、フィットネス業界は人手不足や幽霊会員の減少、競争の激化による疲弊など、多くの課題を抱えています。今後は、これらの課題を解決していくことが重要です。
フィットネス業界の今後の動向としては、潜在的な需要を分析して新たな顧客層を取り込み、ニーズの多様化に対応するためにダイエット以外の価値提供を行う、発達を続けるデジタル技術を経営に活かすなどが挙げられます。
変化が激しく、いまだ成長の余地があるフィットネス業界。経営を進めるうえでは、現状を分析し、今後の動向を注意深く観察することが重要です。